夜、山谷の路上で踊る女将と、秘密の結婚？

深夜のアスファルトで踊る女将

山谷には簡易宿泊所と旅館が多くあります。
その旅館の女将で、夜になると、路上でバレリーナのように踊るご年配の女性がいました。
足にはローラースケート。
スレンダーな方で、路上で踊る際は、黒っぽい長袖シャツとスパッツというお姿。

静かな夜。
外から
「シャー、シャー、グルグル」
というローラースケートの車が、アスファルトの地面をこする音が聞こえます。

はじめて、この音を聞いた時、
「何の音だろう・・・」
と、そっと窓を開け、外の様子を見ると、旅館の女将が片足で立ち、もう片足と両腕を真横へと伸ばす姿が目に入りました。
バレエの「アラベスク」のポーズを取っているように見えます。

路上なので通行人も通るのですが、誰にも何も言わず。
お若い頃、バレエか、フィギュアスケートを習っていたのかもしれません。

結婚を祝わない家族、紹介されない夫

ご近所でも有名な「変わったご家族」がいました。
（ブログの記事「渋柿の試食、そして違法駐車と闘うご家族」参照）

そのご家族には、お嬢様が一人いたのです。
まだ携帯電話が出始まった頃でした。
ご自宅にも固定電話はあると思うのですが、夜になると近くの公衆電話で、その家のお嬢様がよく長電話をしている姿を見かけたのです。

さらに、ご自宅の近くの路上で、男性と「ハグ」をしている姿を見かけた方もいました。
当時の山谷で、日本人の若いカップルが路上で「ハグ」することはなかったように思います。
そのため、目撃してしまったご近所の方も驚いていました。

しばらくして、そのお嬢様の結婚が決まったのです。
お父様とお相手の男性とお二人で、ご近所へご挨拶に周ります。

その数日後、自分の家族が、新婚中のお嬢様と会いました。
家族は、お嬢様へ
「おめでとうございます」
と、お祝いの言葉を伝えます。
しかし、お嬢様は
「はぁ・・・」
という気のない返事をされました。

その後、家族が、お嬢様のお母様と会ったのです。
お母様は家の外を掃除していました。
家族が
「ご結婚、良かったですね」
と伝えると、お嬢様のお母様は、何も言わず、黙って掃除を続けているのです。

朝、お嬢様とお相手の男性と、浅草へ向かうバスの中で会いました。
何度も会ったことがあるのです。

お嬢様ご夫婦は、最寄りのバス停である清川二丁目のバス停からではなく、その前のバス停である泪橋のバス停か、南千住車庫のバス停から乗っているようです。
時折、お嬢様のお相手は清川二丁目のバス停からバスにのり、お嬢様はその前のバス停から乗ったようで、ご夫婦なのに、別々のバス停から同じバスに乗ることがありました。

そんなある日、清川二丁目より前のバス停から、バスに乗ったお嬢様ご夫婦が、二人掛けの座席に並んで座っていたのです。
そこへ、東浅草か、今戸のバス停から乗ってきた乗客に、お嬢様のお知り合いの女性がいました。
学校の同級生なのかもしれません。

お嬢様とその女性は、久しぶりに会ったようで、嬉しそうに話していました。
しかし、お嬢様のお相手の男性は、他人のように、その女性を無視する態度をとっています。
また、お嬢様もお知り合いの女性に、ご自身の夫を紹介する素振りも見せません。

お嬢様は、ご自分の結婚を隠したいように思いました。
隠したい気持ちは、お嬢様のお相手、お嬢様のご家族も同じなのでしょう。

なぜ、そこまで家族全員で隠したいのか。
もう引越しをされ、お会いすることはないのですが、未だに謎です。