むかしむかし、山谷にて
むかーし、昔、そのまた昔。
山谷に、ある家族が住んでおった。
この家では、お父さんはガリガリにやせ細っての。
お母さんは関取のように豊満なお姿をしておった。
2人の間には、たくさんの子どももおったそうな。
ある日、お母さんがいなくなった
けれども、この家は暮らし向きが厳しくての。
ある日、突然、お母さんが家を出て行ってしまったのじゃ。
小さな子どもを抱え、お父さんは必死になって、お母さんの行方を探したんじゃ。
「妻が見つからなくて~」
探せども探せども、お母さんは見つからん。
お父さんは、すっかりしょぼくれておった。
見つけた場所は・・・意外なところ
この話が町内に広まった頃、ご近所の人が言うたんじゃ。
「そのお母さん、見たよ」
どこで見たのかと尋ねると─―
「あそこにさ、銭湯あるじゃん? 2階が銭湯で、1階が食堂になってるとこ。
その食堂の奥で、焼きそばを焼いてるよ。
スッゲー太ってるから、すぐわかるよ」
むかーし昔、とぉーい昔。
山谷に「灯台下暗し」みたいなことがあったんじゃとさ。

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