山谷にある第六方面本部と交番の記憶
警視庁第六方面本部と山谷の交番は、どちらも昭和50年代から山谷に存在しており、警察官の方々が常駐されている場所でした。
いずれも建て直しを経ていますが、昔の建物では、第六方面本部の2階には外階段があり、警察官が急いで駆け下りていく姿を見かけたこともあります。
公衆電話の「大事件」と小学生たちの勇気
小学校3年生の時、遊ぶ約束をした同級生が、家の前でパニックを起こしながら
「大変! 大変! 今くる時にね。そこに喫茶店あるじゃん? その前を歩いていたら、どっかのおじさんが『おし! 見てみろ!』って言ってね・・・そこにある公衆電話の受話器を、グゥーッと引っぱって、コードを切っちゃったんだよ!」
「エェーッ! そ、その時、どうしたの?」
「そ、そ、その時は「うああぁーッ!」となったよ!」
まだ10才にも満たない小学生にとって、見知らぬ男性が、喫茶店が店舗の外に設置した公衆電話の受話器を、力づくで引っぱって、受話器と電話機をつなぐコードを引きちぎってしまう現場を目撃してしまうのは、度肝を抜く大事件です。
「すぐ警察へ行こう」
となって、2人で警視庁第六方面本部へ歩いて向かいました。
第六方面本部から、若い男性の警察官の方が出てきてくれました。
2人で、その警察官の方に
「大変! 大変!」
「早く! 早く! こっち! こっち!」
と、身振り手振りで、小学生の子が目撃した大事件を説明しつつ、すぐ現場へ来て下さるよう、お願いします。
若い警察官の方は笑顔で対応して下さり、第六方面本部にいる他の警察官の方々へ
「ちょっと行ってくる」
と伝えて、パニックでハイテンションになっている小学生2人の後についてきてくれます。
小学生の2人は少し先を走り、時折、立ち止まって振り返り、
「こっち! こっち!」
と、現場を見に来てくれる警察官の方を手を振って呼びます。
若い警察官の方は、終始、ニコニコ笑顔で、2人の後を落ち着いた足取りでついてきてくれるのです。
喫茶店の前に到着すると、その警察官の方は、コードのちぎられた公衆電話の受話器を手にして、その喫茶店のオーナーに事情を話して渡されます。
そして、また、第六方面本部へと戻って行かれました。
小学生の2人も、無事に大事件が解決して、ホッとしたのです。
落とし物を届けに、初めてのパトカー体験
また別の同級生と遊ぶ約束をした日、その子は大きな二つ折りの財布を持っていました。
財布のデザインから見ると、女性のもののようです。
同級生が遊びにくる途中で、道を落ちているのを見つけた落とし物でした。
「警察に届けに行こう」
と、2人で、第六方面本部へ向かいます。
なぜ、落とし物を「交番」ではなく「第六方面本部」へ持っていったのかというと、小学校の校舎に隣接していた第六方面本部は、最も身近な「警察官がいる場所」だったのです。
そのため、小学生だった自分たちは、自然とそこに向かいました。
落とし物の財布を持った同級生と一緒に、第六方面本部の中に入れて頂き、警察官の方々が落とし物を確認されると
「交番に届けた方がいい」
という話しになりました。
そして・・・何と!!
パトカーで、警察官の方が泪橋にある交番まで、連れて行って下さったのです!
「山谷の交番」というと「マンモス交番」が有名だと思います。
ちなみに、マンモス交番は、いろは会商店街を吉野通りへ向かって出た先にある「日本堤交番」のことです。
この時に連れて行って貰ったのは、マンモス交番ではなく、吉野通りをこえた向かい側にある交番でした。
泪橋には「南千住三丁目交番」がありますが、連れて行ってもらった交番は、南千住三丁目交番だったのかどうか、交番名までは覚えていません。
第六方面本部の前から、パトカーの後部座席へ、同級生と一緒に乗せて貰います。
初めて乗るパトカーに、2人の小学生は、嬉しい気持ちと緊張感でいっぱいです。
泪橋にある交番に到着し、交番の中に入ると、警察官の方が小学生の2人に、カップのアイスを出してくれました。
自分は、プリン味のアイスを頂いた記憶があります。
その後、お財布の持ち主が見つかりました。
お財布を拾った子の家に、イチゴをもって、お礼を言いに訪ねてきたそうです。
今でも忘れない、警察官の温かさ
警察官の方や救急隊の方など、人命に関わるお仕事をされている皆様は、私たちが想像する以上に、日々激務だと聞いています。
今あらためて思うのは――
どちらの出来事も、警察官の方々が小さな子どもたちの話を真剣に受け止め、丁寧に対応してくださったからこそ、私たちは安心して暮らすことができているのだということです。
ご多忙の中、本当にありがとうございました。
あのときのご親切に、今でも心から感謝しています。

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