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サビ猫サビちゃんの地域猫物語・前編 | 生まれも育ちも東京の山谷 -山谷は日本三大ドヤ街のひとつです-

サビ猫サビちゃんの地域猫物語・前編

冬の土手通りで聞いた鳴き声

ある日の冬。
夕方、土手通りを歩いていたところ、とあるマンションの入口で、微かに「ニャー、ニャー」という声が聞こえます。
声のする一階の植え込みに近づくと、声が止まりました。
植え込みは暗く、静まり返っています。

気のせいかと思い、そのまま通り過ぎました。
そして翌日の日中、再び、土手通りを歩くと、昨日通ったマンションの前で、微かに「ニャー、ニャー」という声が聞こえます。

声がする入口の植え込みに近づき、猫を呼ぶ時の「チョッ、チョッ、チョッ」と声をかけながら、手招きをしました。
すると、植え込みの中から、やせ細った猫が現れたのです。
毛並みがとても綺麗な、若いサビ猫でした。
目がパッチリと大きく、とても可愛いのです。
とても人懐っこく、こちらにすり寄ってきます。

「その猫ね、だいぶ前からそこにいるの」
という女性の声が、上から聞こえました。
見上げると、ベランダに、マンションの住人である女性とお子さんがいて、こちらの様子を見ていたのです。

さらに女性が
「その猫、そこに捨てられたの。可哀想だけど、このマンション、ペット禁止で飼うことができないのよ」
と言われました。

サビ猫は体を丸くして腕の中に入り、じっとしています。
とても大人しく、決して爪を立てません。
ただ、お腹はペッタンコで、ご飯をずっと食べていないようです。

マンションにいる方から
「その猫、飼ってあげて」
とも言われました。

台東区の土手通りと吉原大門交差点
土手通りと吉原大門交差点の風景(東京都台東区)です。

抱きかかえた小さな命

このサビ猫を、また植え込みに戻すという気持ちにはなれません。
そして、サビ猫を両腕で抱きかかえたまま、そのマンションの前を離れました。

マンションにいる女性の方々から
「そのまま飼って貰いなさい」
「良かった、良かった」
という安堵の声が聞こえてきます。

こうして、サビ猫を抱きかかえて、家へと戻ったのです。

帰宅をすると、サビ猫の引き取りに対して、家族から大反対をされました。
もとのところへ返してくるように言われます。
でも、とても大人しい良い子なのです。

この地域には、猫がいる家があるのです。
サビ猫を抱きかかえ、再び家を出ます。

そして、猫がいる一軒の家を訪ねました。
しかし、もうこれ以上、猫の受け入れはできないことを伝えらたのです。

日はさらに落ちていきました。

吉原大門の信号付近
吉原大門の交差点、マンションや商店が並ぶ街並みです。

同級生の家へたどり着く

学校の同級生で、家に猫がいる家があることを思い出しました。
その家の前を通ると、窓ガラスごしに、ハチワレ猫ともう1人の子が、歩道の様子を眺めている姿を見かけるのです。

サビ猫と一緒に、その同級生の家を訪ねました。

玄関のブザーを押すと、同級生の兄弟が出てきたので
「そちらに猫がいると思うんですけど、こちらの猫を引き取って頂けないかと思って」
とお伝えします。

すると
「少々お待ち下さい」
と言って、お父さんを呼びに行ってくれました。
入れ替わりに、同級生のお父さんが出てきたので、この猫を引き取って頂けないかを伺います。

お父さんは
「ちょっと待って。知り合いを聞いてくる」
と、そのまま外出されました。
しばらく待っていると、お父さんが戻ってきて
「聞きに行ったんだけど、今、外出してるって」
と言われて家の中に入られます。
そして
「この中で待ってなよ」
と、サビ猫と一緒に玄関の中へ入れて頂きました。

家の中には、ハチワレ猫ともうひとりの猫がいて、その奥には体に布団をかけられた猫が横になっています。
布団に横たわる猫は、高齢のようで、目を閉じてずっと眠っていました。

ハチワレ猫ともうひとりの子は、離れたところから、こちらの様子を伺っています。
サビ猫も、ハチワレ猫たちを見て、驚いているようです。

お父さんが猫を入れる持ち運び可能なゲージを持ってきて
「その猫、この中に入れなよ」
と言われました。

サビ猫は大人しくゲージの中に入ります。
お父さんが
「大人しいね」
と言われたので
「本当にいい子なんですよ。絶対、爪をたてないし」
と伝えつつ、サビ猫を保護したこれまでの経緯を話しました。

三ノ輪方面へと続く土手通り
三ノ輪方面へと続く土手通りの景色になります。

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