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山谷で出会った「寸借詐欺(すんしゃくさぎ)」の話 | 生まれも育ちも東京の山谷 -山谷は日本三大ドヤ街のひとつです-

山谷で出会った「寸借詐欺(すんしゃくさぎ)」の話

【平成の山谷での体験】突然の「お金下さい」に恐怖

平成の頃。
休日の午前中、ハガキを出しに行くため、近くの郵便局へと向かいました。
ポストは他にもありますが、帰りに近くのストアでジュースでも買っていこうと思っていたのです。
小銭しか入れていない財布とハガキを持って、家を出ました。

郵便局へ向かって歩いていると、歩道の反対側から、坊主頭の男性がこちらへ向かって歩いてきます。
ご年配というほどではなく、体つきもしっかりしていました。

お互いの距離は、どんどん近づいていきます。
そのまま通り過ぎようとしたところで、相手の男性は立ち止まり
「すみません」
と、こちらを呼び止めました。

こちらも立ち止まると、その男性が
「昨日から何も食べていないんです。100円でいいから、お金下さい」
と言われたのです。

全く知らない人に
「お金下さい」
と言われ、この時は、底知れぬ恐怖を感じました。

持っていたお財布から、全ての小銭を取り出して、
「これしか持ってないんで」
と、相手の手に渡したのです。

すると、その男性は、渡した小銭に両手で大事に包むように持ち
「ありがとうございます」
と言って、去って行きました。

恐怖心を考えると
「金を寄こせッ!!」
と言われるより
「お金下さい」
と言われた方が、まだ良いのかもしれません。

【父の体験】「先輩! 500円貸してくれよ」の違和感

父も自転車に乗っていた時、山谷にお住まいの全く知らない方に
「先輩! 500円貸してくれよ」
と言われました。

山谷では、山谷にお住まいの方が、知らない相手を呼ぶ時は
「先輩」
と呼ぶそうです。

父が、その相手に
「貸してくれって、いつ返すんだ?」
と聞くと、相手は何も言わず、黙っていたと聞きています。

山谷にお住まいの「大人」だけでなく「子供」でも、似たようなことがありました。

【昭和の山谷での体験】赤ちゃん言葉で10円をねだる男子児童

小学生だった昭和の頃。
まだガチャガチャが、1回20円で回せた時代。
明るい日中、いろは会商店街を歩いていました。
すると、男子児童で、ゆっくりと自転車をこぎながら、こちらに近づいてきたのです。
年齢は、小学校1~2年生くらい。
自転車は、子供用自転車で、後輪の左右に補助輪がついました。
男子児童の自転車が目の前で止まります。
そして、赤ちゃん言葉で
「じゅぅーえん、じゅぅーえん、とぉーだぁい」
と、お金をねだってきました。
こちらが
「10円?」
と聞き返すと
「じゅぅーえん、じゅぅーえん、とぉーだぁい」
と、舌足らずの赤ちゃん言葉を繰り返します。
こちらが財布から10円を取り出して渡すと、その男子児童は
「ヤッター!」
と言って、そのまま、いろは会商店街のおもちゃ屋へ、自転車を勢いよく走らせました。
おそらく、ガチャガチャに使うのだと思います。

そして数日後、いろは会商店街を歩いていると、赤ちゃん言葉で10円を要求していた男子児童を見かけました。
その男子児童は、自転車にまたがったまま、幼い女子児童2人の前にいたのです。
女子児童たちは、その男子児童より年下のように見えました。
そして、舌足らずの赤ちゃん言葉で
「じゅぅーえん、じゅぅーえん、とぉーだぁい」
と言っています。

この男子児童は、いろは会商店街のおもちゃ屋で、何度か見かけたことがありました。
舌足らずの赤ちゃん言葉は、相手から金銭をねだる時に使う話し方で、普段は他の男子児童と変わらない話し方をしているのです。

あの男子児童の
「じゅぅーえん、じゅぅーえん、とぉーだぁい」
が、今でも耳に残っています。

善意につけ込む「寸借詐欺」は、きっとどの時代でも、心に小さな波紋を残していくのかもしれません。

昭和の商店街で、補助輪付き自転車に乗った坊主頭の男子児童が、年下の女子児童2人に「10円ちょうだい」と赤ちゃん言葉で手を出している様子。
昭和の山谷・いろは会商店街で見かけた光景。補助輪付き自転車に乗った男の子が、年下の女の子たちに赤ちゃん言葉で10円をねだる。その姿に、戸惑う表情の少女たち。

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