行きの道中は、ちょっとしたドライブ気分
中学校の課外授業がある時、JR南千住駅の改札口前が集合場所になりました。
朝、生徒たちが徒歩で駅へと向かいます。
その中、同級生のチャバちゃんは、お父さんが運転する車に乗せて貰います。
そして自分も一緒に乗せて貰うのです。
南千住駅に集合する朝。
家の前から、チャバちゃんの元気な呼び声が聞こえます。
その子のお父さんが運転する車で迎えに来てくれました。
チャバちゃんが乗っている後部座席に一緒に座って、南千住駅の近くまで連れて行って貰います。
「あ、マッちゃんだ!」
駅に向かう途中で、駅へ歩いている同級生ひとりを見つけます。
チャバちゃんが声をかけ、後部座席は3人になりました。
仲良くしている3人が一緒になると賑やかになり、短いドライブであっても楽しい時間です。
お名前に「松」があると、呼び名が「マッちゃん」となるのは、古今東西、時を超えても同じです。
そして、駅から少し離れたところで停車。
車から降りて、3人で集合場所へと向かいました。
行きは良いのです。
バラバラに散っている生徒たちが、目的地へ近づくごとに集まっていきます。
しかし、課外授業が終わった帰り。
南千住駅の改札口で、到着したクラスごとに解散。
しかも、日が落ちる19時です。
お父さんの車に乗せてくれたチャバちゃんも、マッちゃんも、別クラスのため、いません。

帰り道は一転! 夜の泪橋でひとりに
同じクラスの生徒たちと帰路へ向かいました。
泪橋へ近づくごとに、クラスメイトたちは、家が近づくたびに1人、また1人と消えていきます。
気づけば、夜、泪橋の交差点で1人になっていました。
夜の泪橋――
沢山のアルコールで酔って歩道で横になり、手招きをしている男性。
また、女子学生が通ると、昼間でも口にできないような言葉が飛んでくることもあります。
「より安全な道は、どっちなのか?」
全身の神経を張りつめ、背後にも常に注意を払います。
たとえ遠回りになろうとも、足を止めず、より安全そうな道を瞬時に判断して歩くのです。

山谷を訪れた大学生と「リアル・サバイバル」
山谷に暮らしていなくても、この「リアル・サバイバル」を体験した大学生がいました。
その大学生とは、福井県から東京の大学に入られた方です。
上野に下宿をしていたので、自転車でこちらに来たことがありました。
まだ明るい夕方に帰られたのですが、その際
「決して向こう(南千住の方向)には行かないで下さい」
とお伝えしたのです。
しかし後日に
「この辺、どうなっているんだろう? と思って、そのまま自転車で向こう(行くなと言った南千住の方向)へ行ったら、話しかけても話がつながらないだろうなぁと思うような人が、どこまでも、どこまでも、ズラーッと並んでいて、ゲームの世界かと思った。もう行かない」
と、語られていました。
他にも都内在住ですが、山谷に来たことがない大学生の方がいました。
日中、こちらへは、自転車に乗ってきていました。
家の前に自転車を止めたところ、その持ち主の目の前で、自転車を無理やり盗ろうとした男性が現れたのです。
自転車には鍵がかかっていたので、盗られなかったのですが、腹いせに自転車を地面に倒し、悠然と去って行きました。
自転車の持ち主だった大学生は、後日
「あの時は怖かった」
という話を聞いています。
課外授業の「夜の南千住駅での解散」が、生徒たちにとって「リアル・サバイバル」でした。
今でも思います。
「解散場所と時間は、生徒の安全を第一に考えて下さい」

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