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サビ猫サビちゃんの地域猫物語・中編 | 生まれも育ちも東京の山谷 -山谷は日本三大ドヤ街のひとつです-

サビ猫サビちゃんの地域猫物語・中編

ハチワレ猫との出会いとサビ猫の本当の姿

すると、ハチワレの猫が
「新入りか?」
と、ゲージに近づいてきます。
お父さんの話だと、このハチワレ猫が家の猫たちの「リーダー」だそうです。

ゲージの中にいるサビ猫は、近づいてきたハチワレ猫に
「フーッ! フーッ!」
と息を荒くして威嚇をしています。

その様を見て、お父さんは
「この猫は野良猫じゃない。ずっと飼い猫だったんだ。ほかの猫を見て驚いているだろ? もとは家猫だったから、ほかの猫を見たことがないんだよ」
と教えてくれました。
さらに
「猫を飼っていた人が高齢で亡くなったり、家を建て直したり、引越したりすると、猫を捨てる人がいるんだ。猫は爪をといだりするだろ? 新築の家が傷つくのが嫌だからってね。もう戻ってこれないようにって、遠くへ連れて行って捨てる人もいるんだ。遠いと猫も戻りかたがわからないし、ずっと家猫で外に出たことがなかったら、もう帰れないしね」
とも話してくれたのです。

土手通りを三ノ輪方面へ望む風景。高層マンションと低層の商店が並んでいる
土手通りの三ノ輪方面。高層マンションと昔ながらの商店が並び、時代の移り変わりを感じさせる風景です。

高齢猫の現実と捨てられた命

お父さんは、横たわった猫の側へ行き
「この猫ね、路上に捨てられてたんだよ。もう歯がなくて、こうやって柔らかいご飯をスプーンで口まで運ばないと食べられないんだ。病気にもかかっていて、定期的に病院へ行って、治療しないといけないから、飼い主が捨てちゃったんだな。世話がかかるからって」
と話されます。
横たわった猫は目は閉じつつも、口元にスプーンのご飯がくると、ちゃんと食べていました。

そこへ、ご近所の方らしき女性の方が玄関を開けました。
お父さんが、先ほど外出されたのは、猫の保護活動をしている女性へ、サビ猫を引き取れないかの相談へ行かれたのです。
今日の保護活動が終わり、サビ猫のことを聞き、お父さんのところまで様子を見に来てくれました。

女性の方が、ゲージにいるサビ猫を見て
「この猫ね、サビっていうのよ。ウチも猫は、もうこれ以上は引き取れないわ」
と言われます。
そして、お父さんに
「飼ってあげなさいよ」
と話され、同級生のお父さんは
「ウチも、これ以上は」
と悩まれました。
すでに、ほかの猫たちがいるし、この家のお母さんが賛成するのか、難しいところです。
お母さんは、まだ仕事から戻っていないとのことでした。

土手通りの交差点風景。青い空の下に古い商店や住宅が並んでいる
土手通りを地方橋方面へ向いた景色。昔からの商店が軒を連ね、下町らしい雰囲気が残っています。

地域猫の活動

女性の方が「地域猫(ちいきねこ)」という野良猫や捨て猫の保護活動をしている団体があることを教えてくれました。
そして、その団体で猫の保護をしてくれる方に連絡をとってくれるとも言われたのです。

「一晩くらいなら、このゲージに入ってても、猫は大丈夫だよ」
と、お父さんからゲージを借りることにしました。
サビ猫が入ったゲージを持ち、一旦、家へ戻ります。
家族には、一晩だけという説明をし、居間にゲージを置くことにしました。

その日の夜、地域猫の保護活動をしている方から電話を貰ったのです。
話の内容は、その方もこれ以上、猫は引き取れないこと、そして、捨てられてたペットは、その後、どんな悲惨なことが待っているのかも聞かせてくれました。
今は翌日を待つしかありません。

翌朝、同級生のお父さんが心配をして、様子を聞きにきてくれました。
玄関先で、地域猫の保護活動をしている方からの電話内容を伝えます。

すると、同級生のお父さんが
「あの猫を引き取れそうな人をあたってみるよ」
と言われたので、ゲージに入ったサビ猫をそのまま渡しました。
ゲージの中で「ニャー」と鳴くサビ猫。

いろは会商店街の入口。交差点から商店街の通りが奥へ続いている
キャプション いろは会商店街の入口。土手通りから一歩入ると、生活感あふれる下町の通りが広がります。

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