お花見の定番スポットと昔の風景
「お花見に良い場所があったら教えて下さい」
というメッセージが、銀行から届いたチラシに印字されていました。
春になると、隅田公園や上野公園には、お花見でたくさんの人が集まります。
今は屋台も出るほか、外国人観光客の方々もいて賑やかです。
花見の時期になっても、屋台などがなかった頃は、町内会の婦人部にいる方々が
「お花見の時に、屋台を出して下さい」
と頼まれて、屋台で「おもち」を焼いていました。
そして昔も今も、お花見の場所確保(?)に苦労することなく、桜並木を落ち着いて眺められる場所があります。
そんな場所が、実は山谷にもあるのです。
それは
「山谷堀公園(さんやぼりこうえん)」
です。

川の名残が息づく「山谷堀公園」
山谷堀公園は、バス停で3停留所くらいの長さがある細長い公園です。
もとは川が流れていたそうですが、埋め立てられて公園になりました。
もとは川だったので、公園の所どころに、今も「橋の跡」が残っているのです。
吉原大門近くに「地方橋(じかたばし)」と呼ばれる橋の跡があります。
また、南千住と浅草の間をつなぐバス通りは「吉野通り(よしのどおり)」と呼ばれ、その通りの今戸あたりに「吉野橋(よしのばし)」という橋の跡があります。
山谷堀公園は、地方橋から吉野橋を通って、隅田川の方へとつながる「川の面影を残す公園」なのです。

静かに桜を楽しめる穴場スポット
春になると、見事な桜並木の公園になります。
公園内にはベンチもあるので、桜の並木を歩くだけではなく、座ってゆっくり過ごすこともできるのです。
山谷堀公園は縦長の形をしており、横幅があまりなく、周囲は住宅やビルの建物で囲まれています。
そのため、アルコールを持ち込み、公園で「どんちゃん騒ぎ」はできないのです。
ただ、騒いだりせず、桜並木の美しさを眺めたい方には
「お花見の良い場所」
になると思います。

昭和の子どもたちと駄菓子屋の思い出
昭和の頃、学校が終わった後、山谷堀公園で遊ぶ子供たちの姿もあったのです。
地方橋の近くには駄菓子屋もあり、毎日のお小遣いが30円だった小学生の頃、1枚10円の「スポロガム」を買って大切に食べていた記憶があります。
この駄菓子屋は、お店を正面に見て、右側が駄菓子屋で、左側がおでんのお店という造りでした。
おでんと駄菓子が両方楽しめるお店は、いろは会商店街から三ノ輪へ向かう途中にもあったのです。
今は、おでんも食べられる駄菓子屋はなくなってしまいました。
ただ、駄菓子屋で煮込まれたおでんの「玉子」や「はんぺん」の美味しかったことは今でも忘れていません。

アクセス方法と季節ごとの楽しみ方
アクセスは、東武伊勢崎線・銀座線・都営浅草線「浅草駅」のバス停留所「東武浅草駅前」から、都営バス「南千住駅西口(または南千住車庫)」に乗って「今戸」で下車すると、山谷掘公園の「吉野橋」に到着します。
JR・銀座線・日比谷線「上野駅」のバス停留所「上野駅前」から、都営バス「南千住駅東口(または南千住車庫前)」に乗って「吉原大門」で下車すると、山谷掘公園の「地方橋」近くに到着します。
また「浅草駅」や、日比谷線「三ノ輪駅」から歩いて向かうことも可能です。
隅田公園や上野公園のように大規模な花見会場ではありませんが、山谷堀公園はゆったりと穏やかに桜を楽しみたい方には良い場所です。
桜の季節以外でも、夏は木陰で涼を楽しみ、秋には落ち葉の風情など、季節ごとに違った表情を見せる公園として、地域の散歩コースや憩いの場として親しまれています。
物音や人の声で賑やかな空間から、少し離れた山谷堀公園で、桜と共に静かな春を過ごす「お花見」をするのはいかがでしょうか。

※ 今回掲載しているのは夏に撮影した山谷堀公園の様子です。桜は咲いていませんが、木々の緑があり、散歩をされたり、木陰で静かな時間を過ごしている方も見受けられます。
※ 本記事内の地図は、公園に設置されていた案内板を筆者が撮影して一部加工したものです。
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