子供同士の「勧誘」だった日曜日の朝
小学校3年生の頃、同じクラスでよく一緒に遊んでいたクラスメイトがいました。
日曜日の朝、その子から電話がかかってきたのです。
「みんなの集まりがあるの。今から来ない?」
というお誘いだったのです。
口調は落ち着いた淡々としていました。
この時は
「クラスの子たちと集まって遊ぶのかな?」
と思ったのです。
クラスメイトのところへ向かうと、近くの住宅へと案内されました。
その家の和室に入ると、たくさんの小学生や小さな子供たちが集まっています。
そして、2~3人の若い女性が、集まった子供たちのお世話をしていました。
それから間もなく、和室の奥にある仏壇を正面にして、全員、正座をするのです。
自分は異様な光景を前に、一番後ろで正座をし、じっとしていました。
すると、正座をしている全員が両手を合わせる合掌をして、お経を唱え始めたのです。
この世から切り離された別世界のような怖さがありました。
このクラスメイトは、家族である思想の団体に入っていました。
家へ遊びに行くと、仏壇の前に正座をして
「今、勤行の途中なの。終わるまで待ってて」
と、お経を唱えている姿を何度も見ています。
さらに神社のお祭りがあると
「お祭りに行くと、バチがあたるの。前にね、お神輿を担いじゃいけないって言われているのに、どうしてもお神輿を担いだ子がいるの。そしたら、その子、その後でケガをしたんだって」
と話していたこともありました。
ただ、クリスマスには参加していました。
クリスマスのフライドチキンを、そのクラスメイトが、ひとりで全部食べたそうです。
神社の例大祭は参加禁止なのに、なぜか、キリスト教のクリスマスへは参加はOKのようです。
この日は、お経が終わった後、何事もなく帰宅できました。
そして、次の日曜日の朝。
再び、クラスメイトから電話がかかってきます。
クラスメイトが落ち着いた淡々とした口調で
「みんなの集まりがあるの。今から来ない?」
と誘ってきたのです。
すると、父が慌てて
「その子と一緒に遊ぶのはいい。でも、そういう集まりとかには絶対行っちゃダメだ」
と、緊急した面持ちで言ってきました。
そのクラスメイトに電話をし
「お父さんに行っちゃダメって言われたから」
と断ると、クラスメイトは怒る様子もなく
「わかった」
と事務的に答え、電話が終わりました。
あの日から感じた、思想の怖さ
その後、そのクラスメイトが、勧誘をしてくることはなかったです。
「相手の父親が反対している」
と知って、諦めたのかもしれません。
クラスメイトが勧誘してきたのは、誰かからの指示だったのか。
もしくは、まだ小学校3年のクラスメイトが
「同じ思想の人間を増やす」
と、自らの意思で勧誘活動をしたのか。
今となっては、わかりません。
大学生くらいになると、学内で様々な勧誘があることは聞いています。
ただ、小学校3年。
年令だと、8才から9才です。
8才や9才の子供が、同じ8才から9才の子供を、自分が入っている思想の団体に勧誘をするのです。
「子供が子供を勧誘する」
ということに、特定の思想を持つ団体の怖さを知りました。
子供の頃から毎週末、集団でお経を唱えさせ、家でも毎日お経を唱えるよう教育されます。
従わないと「罰を受ける」という恐怖心を植え付けられるのです。
この体験から
「特定の思想を持つ人やその団体とは距離を置くこと」
「相談ができる家族、友人などを持つこと」
そして
「自分の考えをしっかり持つこと」
の大切さを学びました。


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