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食材は鮮度が大事 -ある鮮魚商と青果商の話- | 生まれも育ちも東京の山谷 -山谷は日本三大ドヤ街のひとつです-

食材は鮮度が大事 -ある鮮魚商と青果商の話-

売れ残った魚と、失われていった信頼

とても個性的なご家族が住んでいました。
ご自宅で魚を販売する、鮮魚商のご一家だったのです。
そのご主人のご両親も、鮮魚商をされていました。
ご両親が鮮魚商をされていた時は、お店はたくさんの買物客で、あふれていたのです。

そして、そのお子様の代となりました。
しかし、ご両親が経営をしていた時と違い、開店していても、買物客が来ることはありません。
誰も買いに来ないので、店頭に置かれている魚介類も若干です。

なぜなのでしょうか。

そのことに関して、ご近所の方々から、このような話を聞いたのです。

ある主婦の方が、お刺身を買いに訪れたことがありました。
その時、鮮魚商のご主人は、お刺身を手に取り、そのニオイを嗅ぎ
「あ、これ、まだ大丈夫だ」
と言って、主婦の方に渡したのです。

また、周囲には旅館が多いのです。
宿泊したお客様の団体に、お刺身を出すことになりました。
その旅館の方が、その鮮魚商からお刺身を購入。
団体客の方々へ、お刺身を出したところ
「なんだ! この刺身は!!」
と、怒り出したとのこと。

鮮度が落ちた食材を買ったら、そのお店には行かないでしょう。
売れ残った魚を処分するのは、もったいないという考えかもしれません。
しかし、傷んだ魚を食べることは危険のような・・・。

その鮮魚商から少し離れたところにも、鮮魚商がありました。
そこの鮮魚商は、たくさんの買物客で、いつも賑わっています。

個性的なご家族が経営している鮮魚商の近くに住む方も、魚を購入する時は、その賑やかな鮮魚商へ買いに行くのです。
(ブログ記事「渋柿の試食、そして違法駐車と闘うご家族」を参考)

子どもが元気よく走って行った日。野菜と一緒に売られていたもの

この地域には、いつも賑わう青果商もありました。
店頭には、たくさんの野菜と果物。

子どもの頃、家で「味噌おでん」を作ることになりました。
母に言われ、青果商へこんにゃくを買いに行ったのです。
青果商の店頭へ到着すると
「いらっしゃい!」
という元気ない声が響きます。

「こんにゃく下さい」
「はい! 何丁?」
「・・・買えるだけ」
と、母から預かったお札を見せました。
青果商の方は
「・・・いくらでも買えるけど・・・」

母から、こんにゃくを買ってくるように言われたのですが
「何丁買ってくるのか」
まで聞いていなかったのです。

すると、青果商の方は
「じゃあ、一緒に聞きに行こう!」

青果商の方と一緒に、家まで元気よく走って向かいます。

家にいた母は
「ああ、ひとつでいいの」
と、ついて来てくれた青果商の方に伝えます。

お店に戻って、こんにゃく一丁を購入。
その日は、美味しく味噌おでんを食べました。

青果商の中に、手作りの漬物を販売しているお店もあったのです。
その青果商も、買物客であふれています。

その青果商で、片方の手に障害をお持ちの方が、店頭で接客のお仕事をされていました。
その方は、おひとりで漬物を漬け、その漬物も店頭で販売されていたのです。
この漬物の美味しいこと!
野菜や果物だけでなく、こちらの方の漬物も人気でした。

そんな活気のある商店があったことも、今となっては遠い昔の話です。

夕暮れの商店街で、シャッターが閉まった鮮魚商の前を、明かりの灯る青果商へ向かって子どもが走って行く水彩画のイラスト。
夕方の商店街。人影のない鮮魚商と、子どもの声が響く青果商。野菜と一緒に、人の温もりが売られていた頃の記憶。

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