Twitterでも山谷の暮らしを発信中です:
フォロー @sanya_tokyo
サビ猫サビちゃんの地域猫物語・後編 | 生まれも育ちも東京の山谷 -山谷は日本三大ドヤ街のひとつです-

サビ猫サビちゃんの地域猫物語・後編

里親探しと揺れる思い

お父さんが帰ったあと、家族からは
「可哀想だって言っても、ウチで猫は飼えないし、ほかの人に「この猫を飼って下さい」って言われたら、周りの人だって困るだろう」
と、今回のサビ猫を連れ帰った行動が、いかに軽率であったのかを注意されました。

「そうだよね」
と思い、お詫びのため、再度、同級生のお父さんの家を訪ねます。
お父さんが玄関に出て来てくれました。
また、お父さんの知り合いで、猫が飼っている家があるそうで、サビ猫は今、その家にいる猫と相性が合って、一緒に暮らせるのかを確認していることを知らされました。

こちらが、家族からサビ猫を連れ帰ったことが軽率な行動だったことをお詫びすると、お父さんは
「そんなことない」
と、キッパリ口にされたのです。

帰宅したあと、家族から
「猫なんて拾ってから、気まずくて、あちらの家の前を通れなくなった」
と言われても、何も言えません。

サビ猫は新しい里親のトライアル中のため、その結果を待つことにしました。

そして、翌日の朝のこと。
スーパーからの買い物から戻った家族が
「今、あの猫のご主人とあった」
と言いました。

土手通り沿いの歩道に設置された明日のジョーの銅像と周囲の街並み
夕暮れの土手通りに立つ「明日のジョー」の銅像。街並みの中に溶け込み、地域の象徴となっています。

膝の上で見つけた本当の居場所

家族がスーパーへ向かっている時、サビ猫のお父さんと、偶然会ったそうです。
(会ったら気まずいと思っている時ほど、その相手と会うものなのかもしれません・・・)

里親のトライアル中だったサビ猫ですが、その家にいる猫と相性が合わず、一旦、お父さんの家に戻りました。
その日は、家にお母さんもいたのです。
サビ猫は居間に入れて貰ったあと、そのまま椅子に座っているお母さんのもとへ行きました。
そして、ポンッとヒザの上にのったのです。
お母さんは自分のヒザの上で、じっとしているサビ猫を見て
「この猫、私が飼う」
と言われました。

ご年配の男性が、いつも猫をヒザにのせている姿は思い浮かびません。
おそらく、サビ猫の前の飼い主は、ご年配の女性だったのでしょう。
そして、その女性はヒザの上に、いつもサビ猫をのせ、その体を撫でて可愛がったのだと思います。
ただ、そのご年配の女性が亡くなるとかがあって、サビ猫は捨てられたのです。
そして、同級生の家にいたお母さんを見て、サビ猫は可愛がってくれた飼い主を思い出し、そのヒザの上へのったのではないでしょうか。

「その猫を飼ってもいいって人もいたんだけど、ウチのヤツが「この猫、私が飼う」って言うからさ」
と、サビ猫はお父さんの家に引き取られることになったのです。

肩にジャケットをかけて立つ明日のジョーの銅像。背景には土手通りの街並み
肩にジャケットをかけた姿のジョー像。力強さと哀愁を感じさせる立ち姿です。

幸運を呼ぶ猫のサビ猫サビちゃん

サビ猫の様子を見に、同級生のお父さんの家へ行きました。
サビ猫は居間で、クッションが置かれた一角で、ご機嫌に寝転がっています。
同級生のお母さんがつけてくれたのか、首には鈴のついた赤い首輪が付いていました。
サビ猫は新しい名前をつけられて、お父さんが名前を呼ぶと「ニャーン」と可愛く鳴きます。
マンション前に捨てられた時の弱々しい「ニャーン」の声とは違ったのです。
その姿は、まるで、もともと、この家の飼い猫だったようにも見えました。

リーダーであるハチワレ猫も、その一角をサビ猫のナワバリとして認めてくれたようです。
ケンカをする様子もなく、猫たちは、各々くつろいでいます。
サビ猫は、ついに新しい住まい、そして新しい家族を見つけました。

それから月日が立ち、同級生のお父さんの家の前を通ると、窓ガラス越しに、歩道の様子を眺めるサビ猫がいました。
穏やかに過ごしている様子です。

そして、さらに年月が過ぎました。
窓ガラス越しに見えるサビ猫は、ご飯をお腹いっぱい食べていることもあって、どっしりとした貫禄のある猫の姿になっていました。

サビ猫の姿を見かける度に
「良かったね」
と、胸の中で呟きます。

猫の中で「サビ猫」は「幸運を呼ぶ猫」と呼ばれているそうです。

サビ猫の新しい里親となってくれたご夫婦、サビ猫の里親探しや相談を聞いて下さった方々、そして新しい家族を見つけたサビ猫に、これからも数多の幸せが訪れますように。

振り返るポーズの明日のジョー像と「土手通り」と書かれた標識
振り返るジョーの表情と「土手通り」の看板。山谷の歴史と下町の空気を象徴しています。

ご感想・思い出などお寄せ下さい

タイトルとURLをコピーしました