夜に響いた金属音の正体
ある日の夜のこと。
家の入口にいたところ
「ガキーンッ! ガキーンッ!」
という激しい音がしました。
金属と金属がぶつかったような音です。
そして、家の前を、グレーのニット帽にダウンジャケットを着た、小柄な男性が通り過ぎて行ったのです。
家の敷地内に、何かが投げ込まれました。
何が投げ込まれたのか、夜の暗闇なので、わかりません。
「明日の朝、確認しよう」
そう思って、家の中へ戻りました。
翌朝、家の入口へ向かい、昨夜の金属音がしたところを見まわします。
すると、1円玉2枚を発見。
あれだけ激しい音がしたので、この硬貨を勢いよくなげたのだと思います。
「・・・なぜ?」
とりあえず、1円玉2枚を入口にある台の上に置きました。
こちらのお金ではないので、この硬貨をどうするか、悩むところです。
金額が大きければ、すぐ交番に届けます。
ただ今回は、1円玉2枚。
交番の警察官の方も、届けられて、ご迷惑ではないかと。
「困ったなぁ」
台の上に、1円玉2枚を置き、2日が経ちました。
予想してはいましたが
「あの2円返して下さい」
と名乗り出る者もいません。
しかし、この1円玉2枚は、こちらのお金ではありません。
「交番に届けよう」
交番へ届けた、1円玉2枚
その週末。
1円玉2枚を、小さなビニール袋に入れます。
そして、交番へと向かいました。
時折、警察官の方が「パトロール中」という看板を掲示して、交番に不在の時があります。
しかし、今回は警察官の方がおふたり、勤務されていました。
交番の入口で、1円玉2枚を持ってきた理由をお伝えします。
こちらが
「1円玉2枚で、ご迷惑をおかけして、すみません」
とお伝えすると、警察官の方は
「そんなことないですよ」
と、硬貨が入ったビニール袋を受け取ってくれました。
ホッとして、交番を後にします。
それから1週間くらい経った頃。
日中、家の外に出ました。
隣家の前を歩くと、柵の上に、白く光るものが見えます。
そこにあったのは、1円玉が1枚。
歩道を歩いていると、時折、1円玉が落ちていることがあります。
ただ、自分のお金ではないですし、近くに交番がないことも。
目に入っても、そのまま通り過ぎる人が多いのかもしれません。
そして、再び出会った持ち主不明の1円玉。
推測ですが、歩道に1円玉1枚が落ちていたのでしょう。
通りがかった人が見つけ、柵の上に置いたのかもしれません。
「1円足りなくても、支払いはできない。お金は落とさないように気をつけないといけない」
そんなことも思った日の翌朝。
外へ出て、隣家の前を通りました。
すると、新たな1円玉が置かれています。
塀の上に並ぶのは1円玉2枚。
投げ込んだのではなく、塀の上へと、静かに置かれたように思います。
隣家にも、持ち主不明の1円玉2枚が届きました。
山谷という地域の不思議な出来事です。


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