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下谷神社 | 生まれも育ちも東京の山谷 -山谷は日本三大ドヤ街のひとつです-

下谷神社

文学の記憶も象徴した碑

浅草から上野と続く浅草通り。
JR上野駅へ近づくと、大きく立派な鳥居が見えてきます。
こちらの鳥居をくぐった先に「下谷神社(したやじんじゃ)」があります。

浅草から上野と続くバス通りから見た「下谷神社」の大きくて立派な鳥居。
浅草から上野と続くバス通りから見た「下谷神社」の大きくて立派な鳥居。
「下谷神社」の鳥居。間近から見ても迫力がある。
「下谷神社」の鳥居。間近から見ても迫力があります。

奈良時代に、現在の上野恩賜公園付近に創建された都内で最も古いお稲荷様のひとつ。
その後、周囲で寺社整備が進んだことから移転し、現在の東上野に移りました。
昭和初期に現在地へ移ったのち、新しい社殿が造られています。

長い歴史を持つ稲荷神社には、商売繁盛、家内安全などの願いで、訪れる方も多いようです。
また、毎年5月に行われる「下谷神社大祭」は、下町で一番早い夏祭りでもあります。

では、鳥居をくぐって、下谷神社へ向かいましょう。

ご神殿は住宅街の中にあります。
バス通りからは離れているので、車の騒音もほとんどなく、とても静かな環境でした。

バス通りの大きく立派な赤い鳥居をくぐると「下谷神社」のご神殿が見えてくる。
バス通りの大きく立派な赤い鳥居をくぐると「下谷神社」のご神殿が見えてきます。
「下谷神社」の「舞殿」が見える。
「下谷神社」の「舞殿」が見えます。
「舞殿」と社務所の間(ご神殿を前にして右側)にある鳥居。
「舞殿」と社務所の間(ご神殿を前にして右側)にある鳥居。
下谷神社前郵便局側の路地。とても落ち着いている。
下谷神社前郵便局側の路地。とても落ち着いています。
下谷神社前郵便局側の路地に建つ「下谷神社」の鳥居。
下谷神社前郵便局側の路地に建つ「下谷神社」の鳥居。

浅草通りに面した鳥居から境内の中へ。
ご神殿の前には大きな灯篭が対であります。
下谷神社の灯籠は多くは「氏子(地元の商人・職人)」「芸人・興行関係者」「町内・講(こう)」などによって寄進されたものです。
灯籠は「明かり」=「神への奉仕」と「名を残す祈り」という意味を持っていました。
「商売繁盛」「家内安全」「火伏せ(火事除け)」を願って奉納されることが多く、
「仕事で得たお金を、町と神に返す」
という下町らしい信仰のかたちだったのです。

浅草通り(バス通り)に面した鳥居から入った「下谷神社」の境内。神社の神聖な空気に包まれている。
浅草通り(バス通り)に面した鳥居から入った「下谷神社」の境内。神社の神聖な空気に包まれています。
下谷の灯籠は、芸が栄えた町の「明かりの記録」でもある。
下谷の灯籠は、芸が栄えた町の「明かりの記録」でもあるのです。
下谷の灯籠は、ただの明かりではない。この町で生きた商人や芸人たちの願いが、今も静かに灯り続けている。
下谷の灯籠は、ただの明かりではありません。この町で生きた商人や芸人たちの願いが、今も静かに灯り続けています。

ご神殿前の鳥居から境内に入ると、右側に「舞殿(ぶでん)」があります。
下谷神社は寄席(=落語などの演芸)発祥の地で、芸能と深い縁のある神社。
例大祭では神輿・演芸・奉納舞が行われるという「芸の神社」的な顔を持っていたのです。
下谷神社の「舞殿」は神事用だけではなく、下町の人々の「芸と楽しみ」を神様に捧げる場所として、重視されてきました。

風に揺れる木々と、静かな参道。
風に揺れる木々と、静かな参道。
「下谷神社」の境内に入ると、右側に、神様へ歌や舞、芸を奉納するための正式な舞台「舞殿(ぶでん)」がある。
「下谷神社」の境内に入ると、右側に、神様へ歌や舞、芸を奉納するための正式な舞台「舞殿(ぶでん)」があります。

境内にある「寄席発祥之地」の石碑。
江戸時代、初代名人とされる落語家・山生亭可楽師匠(後の三笑亭可楽師匠)が、ここで大衆向けの「寄席興行(よせこうぎょう)」を行いました。
この句が下谷神社に刻まれているのは、同社が 江戸における「寄席発祥の地」とされる場所だからです。

境内には「寄席発祥之地」の石碑もある。
境内には「寄席発祥之地」の石碑もあります。

そして、この地で生きた文化人の「正岡子規」氏の碑もあります。

「寄席はねて 上野の鐘の 夜長哉(よせはねて うえののかねの よながかな)」

 → 寄席が終わり、上野の寺院の鐘の音が、長い夜のように響く。

「下谷神社」の境内に建つ正岡子規氏の碑。
「下谷神社」の境内に建つ正岡子規氏の碑。

この句は、正岡氏が寄席と上野の町の響きを詠んだ俳句。
「下谷神社」は、江戸における「寄席発祥の地」とされる場所であったため、寄席興行発祥を記念する石碑と並んで正岡氏の句碑が建てられたのです。

正岡氏は、療養生活を送った晩年を、この下谷・根岸一帯で過ごしました。
下谷神社は、正岡氏にとっての散歩コースであり、気分転換、心のよりどころとして、日常的に参拝していた神社だったと伝えられています。
日常的に参拝していた氏神様であったことから、ここに正岡氏の句碑が建てられました。
正岡氏は、この地で生き、俳句を詠み、病と向き合ったのです。

「下谷神社」には「寄席発祥之地」と、正岡子規氏の碑が並んで建っている。
「下谷神社」には「寄席発祥之地」と、正岡子規氏の碑が並んで建っています。

商いと芸の成功を願う信仰

下谷神社には、手水舎に生花を飾る季節ごとの「花手水」があります。

昭和の面影を残す、下谷神社の境内風景。
昭和の面影を残す、下谷神社の境内風景。
「下谷神社」の「花手水」
「下谷神社」の「花手水」

では、神門をくぐってみましょう。

「下谷神社」の神門。
「下谷神社」の神門。

ご神殿の前に鎮守する対の狛犬。
「下谷神社」の狛犬は、ただの守り役ではなく、胴が太くて足が短め、重心が低いことです。
このスタイルは「実戦型・護衛型」とも言えます。
「下谷神社」の狛犬は、江戸下町らしい歴史と造形美をあわせ持つ存在として知られているのです。

狛犬は向かって左側が「吽形」(口を閉じる)。
狛犬は向かって 左側が「吽形」(口を閉じる)。
狛犬は向かって右側が「阿形」(口を開ける)。
狛犬は向かって右側が「阿形」(口を開ける)。

この日は、女性の方が多く参拝をされ、小さなお子様と一緒の方もいました。
拝殿の天井には、日本画の巨匠・横山大観画伯による「龍」の天井画が描かれています。

今日も静かに、人々の願いを受け止めている。
今日も静かに、人々の願いを受け止めています。
境内には休憩所もある。
境内には休憩所もありました。
参拝の足音だけが響く、穏やかな境内。
参拝の足音だけが響く、穏やかな境内。
商売繁盛・家内安全などのご利益がある「下谷神社」
商売繁盛・家内安全などのご利益がある「下谷神社」
都会の真ん中にある、静かな祈りの空間。
都会の真ん中にある、静かな祈りの空間。
ご神殿の「下谷神社」の額。
ご神殿の「下谷神社」の額。

社務所の方では、御神札・御守りのほか、千社札ステッカーや念珠の授与もされています。
御朱印の申し込みをされている参拝者の方々もいました。
下谷神社では、限定御朱印などもあることから「御朱印めぐり」のスポットとしても注目されています。

御神札・御守りの授与する社務所。御朱印の申し込みをしている参拝者の姿もある。
御神札・御守りの授与する社務所。御朱印の申し込みをしている参拝者の姿もありました。
「下谷神社」の社務所。
「下谷神社」の社務所。
参拝した証の御朱印。
参拝した証の御朱印。

下谷神社の境内には「隆栄稲荷神社(りゅうえいいなりじんじゃ)」があります。
境内社(けいだいしゃ)として祀られている稲荷社で、もともとは江戸時代からこの地で信仰されてきた由緒あるお稲荷様です。
そして、知る人ぞ知る商売繁盛・芸能上達のパワースポット。

「下谷神社」の境内社である「隆栄稲荷神社」の入口。
「下谷神社」の境内社である「隆栄稲荷神社」の入口。
境内社の「隆栄稲荷神社」には、たくさんの鳥居がある。
境内社の「隆栄稲荷神社」には、たくさんの鳥居があります。
「隆栄稲荷神社」の祭神は「宇賀魂命」
「隆栄稲荷神社」の祭神は「宇賀魂命」
「下谷神社」のご神殿と「隆栄稲荷神社」の間にある道は、下谷神社前郵便局側の路地へとつながっている。
「下谷神社」のご神殿と「隆栄稲荷神社」の間にある道は、下谷神社前郵便局側の路地へとつながっています。

名前に「隆(さかえる)」「栄(えい・さかえ)」があることから「大いに栄える」という、とても縁起の良い名前を持っています。

隆栄稲荷は、商売・芸・人生の発展を願う稲荷神として、今でも俳優、芸人、音楽関係、クリエイターの参拝が多いそうです。

稲荷社に必ず対で置かれるのが、神様の使いである狐像。
狐像がくわえている「宝物」がありますね。
この「宝物」とその意味とは何でしょうか。

● 稲穂(いなほ):五穀豊穣・商売繁盛・努力が実る象徴 → 「働いた分だけ、ちゃんと実りがある」という意味。
● 宝珠(ほうじゅ):財運・願望成就・金運上昇 → 商人・職人・芸人の信仰と強く結びつきます。
● 鍵(かぎ):倉の鍵・財宝の扉・未来の可能性 → 「自分の運は自分で開け」という、下町らしい現実的なメッセージでもあります。

隆栄稲荷の狐像は、稲荷系らしい宝物持ちタイプですね。
この狐像は、稲荷大神のメッセンジャーであり、商売・芸・努力の成果を神に届ける存在という役割を担っています。

境内社に、たくさんある狐像。
境内社に、たくさんある狐像。
「隆栄稲荷神社」の前にも、たくさんの鳥居。
「隆栄稲荷神社」の前にも、たくさんの鳥居。
神様の使いである対の狐像もある。
神様の使いである対の狐像もあります。

下谷神社へのアクセス

  • JR「上野駅(浅草口)」から徒歩11分。
  • 日比谷線・銀座線「上野駅(1番出口)」から徒歩9分。
  • 銀座線「稲荷町駅(2番出口)」徒歩から3分。
  • 大江戸線「新御徒町駅(A1出口)」から徒歩10分。
長い歴史を感じさせる、境内のたたずまい。
長い歴史を感じさせる、境内のたたずまい。

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