山谷の日常に潜む「非日常」――訪問セールスとその奇妙な記憶

女子中学生の「ばんそうこう」セールス

「ばんそうこうを買って下さい」
と、突然、見知らぬ女子学生が一人で、家へ訪ねてきたことがありました。
年令は中学生くらいで、制服は洗っていないような汚れがあり、ばんそうこうも使い古しのような状態だったそうです。
その女子学生は
「ばんそうこうを売って寄付活動をしている」
と話していたことを聞きました。

誰かの傘を「勝手に」販売？

「傘を買いませんか」
と、突然、見知らぬ男性が一人で、家へ訪ねてきたことがあったそうです。
その男性が持っていたのは、使用感のある傘で
「どこかの家が陰干しされていた傘を勝手に持ってきて売っているのでは・・・？」
という憶測が流れました。

外国人と日本人の寄付勧誘コンビ

「寄付して下さい」
と、突然、見知らぬ日本人男性と、アフリカ系の外国人男性が、2人組となって家へ訪ねてきました。
外国人男性は無言で、日本人男性が説明していたそうです。
二人はジャケットを着て、家々を回っていたとのこと。
日本人男性が
「寄付を集めるため、この辺を歩いている」
と話していました。
実際、山谷にある家を、2人で一軒ずつ、訪ね歩く姿が目撃されています。

ご高齢男性の「包丁研ぎ、かして下さい」

子供が留守番をしていると、家に誰かが訪ねてきたそうです。
ただ、玄関へ出る前に相手が去ってしまいました。
後を追って家の外に出たところ、歩道沿いの腰かけに、ご高齢の男性が一人で座っていたのです。

そのご高齢の男性は、とても穏やかで優しげな方でした。
その子が何の用事で家に来たのかを聞くと、その方は
「包丁研ぎがあったら、かりようかと思って・・・」
と、落ち着いた口調で話していたのです。

後日、その子が同級生に、包丁研ぎをかりにきた人の話しをすると、聞いて生徒は
「知らない人が、包丁研ぎをかりに来たんだって！」
と大騒ぎしました。
今聞くとちょっと（？）怖い、ほのぼのエピソードです。

【番外編】お風呂上がりのパンツだけの男性

■ パンツだけの男性、社員寮のシャワーに現る

山谷の社員寮に、ある家族が住んでいました。
その寮はマンションのような造りで、玄関を開けると、すぐに建物内の廊下に出ます。
ただ、社員寮内の廊下は、日中も電気がついておらず、シーンと静まり返っていて、とても薄暗いのです。
そのため、昼間でも廊下で誰かに出会うと、ドキッとすることがありました。

この寮に住む家族は、3階にある2DKを2つ借りており、部屋は隣同士になっていました。
2つの部屋は、ベランダを通じて行き来していたのです。

その日、両親は仕事があり、高校生のお姉さんと中学生の弟は、別々の2DKで遊んでいました。
お姉さんのもとには、同級生が訪ねてきています。
隣りの2DKにも、弟の友人が訪ねてくることになっていました。
また、お母さんも仕事は午前中までの予定となっていたのです。

その2DKには、それぞれに玄関がありました。
玄関はマンション内の廊下につながっており、廊下を挟んだ向かい側には物置と共用の浴室があったのです。
ただ、浴室は誰も使用していないのです。

また、両親の会社は、その寮から遠くないところにあります。

お姉さんと同級生がテレビを見ていたところ、隣りの2DKにいた弟がベランダを通って姿を見せて
「お姉ちゃん！ 知らない人が向かい側のお風呂に入っちゃったよ」
と顔色を変えて話しました。
お姉さんが
「会社の人でしょ？」
と聞くと、弟は
「ううん」
と首を振り、「あっ！」と思い出したようにタンスの引き出しを開けました。
「こういうの着ている人」
と、お父さんのラクダシャツを引っぱって答えます。

どうやら山谷にお住まいの方のようです。

■ 社員寮に現れた「パンツ男性」の正体とは？

確かに、廊下の方から、シャワーの音がかすかに聞こえていました。

すると、弟はハッとして、これから遊びにくる友人について
「ガタイがデカいから大丈夫だよ！」
と言ったのです。

ガタイがデカくても、か弱い少年だと、どうしようもありません。
ただ、弟は安心したように、また隣りの2DKへと戻って行きました。

そろそろお母さんが戻ってくる時間になりました。

――と、廊下で物音が聞こえます。

お姉さんが玄関ドアについているドアスコープから廊下の様子をそっと確認しました。

すると、白いブリーフのパンツだけをはいた裸の男性が1人
「スイッチはどこだ？」
と呟きながら、電気のついていない薄暗い廊下で、キョロキョロしています。

そこへ、階段を上ってくる足音が聞こえました。
お母さんが戻ってきたのです。

階段を上がってくると、暗い廊下の先に、パンツだけをはいた裸の男性が見えてきます。

お母さんがギョッとすると、シャワーを浴びて浴室から出てきた男性が、電気のスイッチを探していることを伝えました。

お母さんが、にこやかに
「ああ、そこですよ」
と教えてあげながら、お姉さんと同級生がいる2DKの部屋へと入りました。

■ 「シャワーを借ります」社員寮で起きた珍事件

浴室で体を洗っていたのは、山谷にお住まいの方ではなく、この寮を所有している会社の社員の方でした。
シャワーだけを浴びに、寮を訪れたようです。

お母さんは
「階段を上がっていったら、パンツだけの男がこうやって（体を丸めて背中を向けて）立っていたから、「エッ！」と思ったけど。昼間だからいいけど、夕方だったら気持ち悪いわよねぇ」
と話していました。

その男性が去った後の廊下は、お湯の匂いが漂っていたのです。

今回は「山谷でちょっとビックリしたエピソード」をご紹介しました。