三ノ輪の町を歩いていたときのことです。
とある町かどに、小さな稲荷神社を見つけました。

建物のかたわらに、ちょこんと佇む、お社。
朱色の鳥居に「正一位稲荷大明神」の赤い幟(のぼり)が、風に揺れています。
手入れの行き届いた、小さなお社
近づいてみて、まず思ったのは、この神社が、とても大切にされていることでした。
木のお社は、きれいに保たれ、しめ縄も、きちんと張られています。
お社の前には、一対のお狐様の像。
首には、鮮やかな赤い前掛けがされていました。

小さな神社は、町のあちこちにあります。
けれど、手入れをする人がいなければ、荒れてしまうものです。
このお社は、違いました。
管理をされている方々が、日々、心を込めて守っていらっしゃることが、隅々から伝わってきます。
東京の町では、ビルやマンションが建てられるとき、その土地に古くからあったお稲荷さんを、壊さずに残すことがあります。
新しい建物のかたわらで、昔からの神様が、変わらずに祀られ続けるのです。
このお社の石の土台にも、長い年月の跡が刻まれています。
きっと、この地を、ずっと見守ってこられたのでしょう。

社殿の裏側で見つけた、あるもの
そして、このお社で、私は、心を動かされるものを見つけました。
社殿の裏側です。
石の土台のかたわらに、白い容器が、そっと置かれていました。
中には、きれいな水が、たっぷり。

はじめは、何だろうと思いました。
けれど、すぐに気づきました。
これは、小さな生き物たちのための、水飲み場なのだと。
今年の夏も、酷暑です。
連日の厳しい暑さの中、喉が渇くのは、人間だけではありません。
家を持たない地域猫。
小鳥たち。
小さな命にとって、この暑さの中で水にありつけるかどうかは、命に関わります。
その命のために、誰かが、きれいな水を、たっぷりと用意している。
人目につかない、社殿の裏側で。
誰に知られるでもなく。
おわりに
お稲荷様は、昔から、町の暮らしを見守ってきた神様です。
そして、この小さなお社では、神様を守る人々が、町の小さな命までも、そっと見守っていました。
きれいに掃き清められた境内。
赤い前掛けのお狐様たち。
そして、社殿の裏の、水飲み場。
派手なことは、何ひとつありません。
けれど、そこには、確かな優しさが、静かに息づいていました。
この記事では、お社の場所を、詳しくは書かないことにしました。
人知れず続けられている、静かな営みは、静かなままに、そっとしておきたいからです。
町のどこかで、小さなお社が、今日も町と、町の生き物たちを、見守っています。
もし、どこかの町かどでも、こんな優しさに出会ったら、そっと、手を合わせてみて下さい。

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